0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

著作権の種類には何があるのか(5)

前回のブログで、「二次的著作物を創作する権利」と、「二次的著作物を利用する権利」を紹介しました。

この2つはとても重要です。この2つの権利が契約書に書かれておらず、トラブルになることもあるからです。

詳しく見てみましょう。

 

○ 二次的著作物を創作する権利

 ~ 二次的著作物を創作(翻訳、脚色、映画化、編曲等)する権利

 

貴方が小説を書いたとします。その小説を英語やフランス語などに翻訳する権利は、当然貴方が持っています。また、その小説を元にして演劇の脚本を書いたり、その小説を映画にする権利も、貴方が持っています。貴方が音楽作品を作曲した場合も同じです。その音楽作品(曲)を編曲する権利を貴方が持っています。

このように、貴方は、小説や曲を複製する権利(複製権)やWebサイトなどで公衆送信を行う権利(公衆送信権)のほかに、翻訳、脚色、映画化、編曲などをする権利を持っているのです。これが、二次的著作物を創作する権利です。

 

でも、小説を他の言語に翻訳するのは大変な作業です。プロの翻訳家の方に任せた方がよいでしょう。演劇の脚本を書いたり、映画化することも同じです。脚本家や映画製作会社にお任せした方がよいです。編曲についても、アレンジが得意な編曲家に任せるべきです。

そうすると、元の小説、元の曲(原著作物)を創作した人(原著作者)は、翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家の方と契約して、翻訳、脚色、映画化、編曲する権利、すなわち二次的著作物を創作する権利を(有償で)譲ればよいことになります。

つまり、この二次的著作物を創作する権利は他人に譲渡できるので、プロに翻訳、脚色、映画化、編曲を任せればよいのです。翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家の方も、小説(原作)や曲(原曲)を求めています。彼らとWin-Winの関係が成り立ちます。

 

 

でも、ここで気になることがあります。翻訳物、シナリオ、映画、編曲に対して、元々の小説や曲を創作した貴方が仮に何の権利も持っていない場合、他人がそれらを自由に使ってしまって、貴方には何の利益や報酬がもたらされないことになってしまいます。

もし、映画や編曲が当たって、映画製作会社や編曲家だけに収入があったときに、貴方はどう思うでしょうか。

そこで、著作権法は、元々の小説や曲を創作した貴方にも翻訳物、シナリオ、映画、編曲について権利を持っていることを定めています。それが、二次的著作物を利用する権利です。

 

○ 二次的著作物を利用する権利

 ~ 二次的著作物を創作した著作者(翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家等)が、この権利を持っている。

   二次的著作物の元になっている小説や音楽などを創作した著作者(原著作者)も、この権利を持っている。

 

この二次的著作物を利用する権利によって、元々の小説や曲を創作した貴方も、何らかの利益や報酬が得られることとなります

元々の小説や曲を創作した貴方は原著作者と呼ばれます。原著作者である貴方は、翻訳家、脚本家、映画製作会社、編曲家に二次的著作物を創作する権利を譲渡しても、二次的著作物を利用する権利が残っているのです。

 

この二次的著作物を利用する権利も(有償で)譲渡することができます。ですので、翻訳、脚色、映画化、編曲を他人に任せる場合に、二次的著作物を創作する権利だけを譲渡するのか、二次的著作物を創作する権利と二次的著作物を利用する権利の2つとも譲渡するのか、決めておく必要があります。そのことを契約書に書いておくことが重要になるのです。

 

今回は、二次的著作物を創作する権利と、二次的著作物を利用する権利の2つを述べました。

小説家や作曲家の方は、これら2つの権利を知っておくことが、とてもとても大事です。

 

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