0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

著作権を所有している人は誰か(3)

私は映画が好きです。最近ではゴジラ-1.0が話題になりましたね。

さて、映画製作の場合、様々な人がその製作に関わっています。プロデューサーや監督はもちろんのこと、視覚効果(VFX)を担当する監督も関わっています。

これらの人のように、映画の製作全体に関わった人たちが映画の著作者になります。

すなわち、映画の場合は、複数の人たちが著作者になるのです。

 

 

映画以外の創作に話を戻しましょう。

前回までのブログでは、個人(人)が著作者になる場合について述べました。

実は、人が著作者になる場合のほかに、会社などの法人が著作者になる場合があります。ビジネスの分野では、法人が著作者になる場合が多く、契約書の中で明記されていることもあります。

 

著作権法では、法人が著作者になる要件が定められています。

主な要件は以下のとおりです。

 

1 創作の企画を立てるのが法人であること

2 法人に所属する人が創作すること

3 その人が職務上創作すること

 

つまり、会社員が職務で何かを創作したとき、その創作されたものの著作者は、会社員が勤める会社になるということです。ですので、その創作されたものを公表するときは、会社名で公表しなければならないのです。

通常では、就業規則に従業員が職務上創作したものの著作権については、従業員は会社に譲渡する旨が定められています。

どんなによいものを創作しても、著作者は会社になってしまうのです。勤め人には辛いところですね。

 

次回からは、いよいよ著作物について見ていきます。

 

著作権を所有している人は誰か(2)

貴方の友達の中に、絵の上手いA君がいるとします。

そのA君に頼んで、イラストを描いてもらったとします。

頼むときに、いま流行りのシマエナガを可愛く描いてね、とイラストの内容の指示をした場合、完成したイラストの著作者は貴方でしょうか、A君でしょうか、それとも両方でしょうか。

 

 

前回のブログで、著作者は創作をする者であり、創作とは思想または感情を物として表現することだと述べました。この例の場合、イラストとして表現するための感情を抱いていたのは誰かが問題になります。

 

貴方はイラストの内容を指示しただけで、具体的な構図や色使いなどの表現については提案していません。

一方、A君はイラストの構図、シマエナガの表情や背景を考えて線や色に表しています。

そうすると、イラストを具体的に表現したのはA君であり、A君が頭の中でイラストを表現するための感情を持っていたことになります。

したがって、完成したイラストの著作者はA君になります。

 

このように、イラストを頼んだ貴方はイラストの著作者ではないことがわかります。

 

ビジネスの分野では、この点がよく紛争の種になります。多くはイラスト制作を発注した会社が著作権を持つという誤解が元になっているのです。紛争を避けるために、発注会社は受注会社の著作権を利用することについて事前に契約をしておくことが必要です。

 

次回は、会社が著作者になる場合について見ていきましょう。

 

著作権を所有している人は誰か(1)

著作権を所有している人は、一体誰なのでしょうか。

例えば、5歳の幼児が絵を描いたとします。その幼児は絵の著作権を所有しているのでしょうか。

生成AIによって自動的に作られた曲については、どのように考えればよいのでしょうか。

 

 

著作権を所有している人は、著作者といいます。

著作者は、著作物を創作する者です。

(著作物については今後のブログで紹介します。)

「者」には、人のほか、株式会社などの法人も含まれます。

 

では、創作とは何でしょうか。

創作とは、思想または感情を、物として表現することです。

具体的には、人が自分の考えやアイデアを文章や図として書いたり、自分の感情やフィーリングを絵や音楽として表すことです。

 

そうすると、自分の思想または感情を表現して物にすることができる人であるならば、その人は著作者であるということができます。

5歳の幼児は、自分の感情やフィーリングを絵として表現しているので、著作者です。

一方、AI自体は、(現時点では)思想または感情を抱いていないので、著作者ではありません。

 

それでは、高度な知能を持ち、絵を描くこともできるチンパンジーは、著作者でしょうか。

もうわかりますよね、著作者ではありません。チンパンジーは者ではないからです。

著作権法などの法律で「者」というのは、個人(人)や法人を指しており、チンパンジーなどの動物は含まれません。

 

次回も、著作者について見ていきましょう。

 

著作権を理解する3つのアプローチ

著作権、とっつきにくいですよね~

いろいろな言葉が出てきて難しいです。

 

巷でよく言われる版権とどう違うのか、

著作権で保護される期間はどれくらいなのか、

どういう場合に著作権の侵害になるのか、

そもそも著作権を理解するのに、どうアプローチすればよいのか、

わかりませんよね・・・

 

そして、著作権を解説する本は分厚くて、「入門」と書かれていても、法律の専門書であることが多く、頭を抱えてしまいます。

 

 

今日は、著作権を理解する3つのアプローチを紹介します。

 

1 著作権を所有している人は誰か

2 著作権が発生する対象物は何か

3 著作権の種類には何があるのか

 

すなわち、著作権を持つ人(主体)、著作権を生む物(客体)、著作権の種類の3つにアプローチします。

 

著作権法の用語で説明すると、次のようになります。

1 誰が著作者になるのか

  (=著作者であるための要件)

2 何が著作物になるのか

  (=著作物であるための要件)

3 著作権者は自分の著作物について

  独占してどう使用できるのか、又は

  他人にその使用を許せるのか)

  (著作権の権利行使又は使用許諾)

 

これら3つの切り口によって、著作権の全貌が明らかになるのです。

 

それでは、次回は、

 

1 著作権を所有している人は誰か

 

について、一緒に見ていきましょう。

 

プロローグ

 

初めまして、万象(ばんしょう)と申します。

 

このブログでは、20年以上「著作権」の調査研究に携わってきた著者が、著作権についてわかりやすく解説をしていきます。

 

さて、著作権と言えば、最近もYouTubeにおける将棋の棋譜に関する件で話題となりました。

 

具体的には今年1月、将棋の棋譜をYouTubeなどの動画内で示した者が、将棋を実況中継していた会社から動画の削除申請を受けていたところ、その削除申請を撤回させる判決が、大阪地方裁判所で言い渡された件です。

 

 

この判決では、将棋の棋譜を示した動画がその会社の著作権を侵害しないことと、棋譜情報が公表された事実であって自由に利用できることが示されました。

 

この判決にしたがえば、将棋の棋譜を示すことは著作権の侵害にはならないことになりますが、この判決は恐らく確定していないので、まだ何ともいえません。被告である会社が控訴する可能性があるからです。

 

将棋の棋譜を示すことが著作権の侵害になるか否か、これはとっても大事な問題であり、大阪地方裁判所の判決が確定するか、控訴審で逆の判断となるかで、多くの方に影響を与えることになるでしょう。

 

もっとも、一つの判決で全てが決する訳ではなく、事実関係が異なる他の裁判も待ちたいところです。

 

次回からは、著作権について解説していきます。

 

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設定日:2024年4月5日
掲載日:2024年5月5日