0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

超「商品流通社会」と、著作権(2)

前回は、メタバースという仮想空間内の商品を例にあげて、仮想空間内の商品(架空の商品、著作物)を選択するのは、現実世界における自分が優越感、満足感、幸福感を得るためであって、仮想空間内のアバター(自分の分身)が満足するためではないという話をしました。

仮想の商品であるヘアードライヤーによってアバター自体が気持ちよくなることはないからです。

 

アバター自体は満足しないが、アバターを操作する自分は、仮想世界の中でアバターの活動を通じて満足する。仮想空間内の商品や建築物、更には環境を独自に構築していく中で、思い入れのある仮想商品、仮想建築物、仮想環境を選んでいく。そのようにして、自分の価値観を仮想空間内で具体的に実現させていく。

このような活動は、自分が好きな芸能人やキャラクターなどをグッツを買ったり作ったりすることで応援する「推し活」に似ています。仮想空間内で仮想商品を選ぶ、というよりも「理想の仮想環境をかたち作る」という感覚です。

 

その理想の仮想環境の元になるのは、仮想のモノ、架空のモノですので、仮想空間内の「著作物」として考えられます。勿論、自分で独自に作って自分で使用してもよいのですが、作ったモノに対して他の人が使用したいと思った時に交換価値が発生します。すなわち、仮想空間内の「著作物」は、売買の対象になり、仮想の商品になります。自分で独自に作るよりも、プロに作ってもらって購入する。そして、オーダーメードで作ってもらうよりも用意された既製品を購入するようになる。まるで洋服を買うように仮想の商品を購入していくことになります。

一つ一つの仮想のモノが仮想商品になることもあるでしょうし、複数の仮想商品によって構成された仮想建築物やそれを取り巻く仮想環境全体が商品となることもあるでしょう。家具付きの分譲マンションや、庭付きの一戸建てを購入するように、仮想空間内でも、トータルな仮想建築物や仮想環境をユーザーが購入する。そのような大規模な仮想環境をユーザーに購入してもらう、というビジネスが今後成立するかもしれません。

 

メタバースの将来イメージや、その可能性については別の機会に大いに語るとして、現時点において、仮想空間内で仮想商品や仮想環境をユーザーが自由に選択しているわかりやすい例を紹介します。仮想空間内で複数の兵士が登場するオンライン対戦ゲームです。ゲーマー(リアル世界でゲームを楽しむ人)が、対戦場となる好みのマップを選んだり、対戦に用いる好みの武器を選んでゲームを楽しんでいます。ゲーム内の仮想通貨によって購入することもあれば、リアル世界のお金で購入することもあります。Call of Duty シリーズや、Fortniteなどでは、武器に色を付けたり、兵士のコスチュームを派手にすることがゲーマーの価値観の反映になっており、そのような武器や兵士が仮想空間内で目立つことによって、仮想環境自体が豊かになり、ひいては新規ゲーマーの呼び水になっています。

 

メタバースなどの仮想環境の未来や可能性に否定的な方は、所詮ゲームの世界だけであろうとお考えになっているのかもしせません・・・

でも、冷静に考えてみれば、いま当たり前になったパソコンのデスクトップ環境は、リアルな世界の机の上で行っていたことを仮想空間で実現したものです。会計帳簿は表計算ソフトになり、原稿用紙はワープロソフトになりました。例えば、Microsoft Officeでは、Officeテーマを選択することによって、Wordソフトの作業環境を好きな色に構築できたります。このようなアレンジもユーザーの価値観の反映と言えますし、今後はビジネスソフトやビジネス仮想空間も大きく変革していくでしょう。職場のデスクブースが職員の好みで様々に彩られているように、ビジネス仮想空間も職員の好みの仮想商品で満ち溢れるようになるでしょう。

 

このように、仮想空間の未来形には無限の可能性があります。そして、仮想空間内で流通するのが仮想商品であり、その元になっているのが仮想空間内の「著作物」なのです。

次回もまた、仮想空間内の「著作物」について考えていきましょう。

 

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