前回は、二次創作の元の著作者に何らの経済的報酬を与えてよいのでは、という話をしました。果たして、元の著作者の情報はどのように知ることができるのでしょうか。
食品の世界では、トレーサビリティが普及しつつあり、食品の生産者、生産日、生産方法などの生産に関する情報や、輸送経路などの流通に関する情報を、QRコードなどにより購入者が確認できようになっています。
パロディ作品のような二次創作品についても、そのような情報、すなわち、元になっている著作物は何か、その著作者は誰か、その著作者が著作権を持っているのか、持っていないならば現在の著作権者は誰か、という情報が簡単に確認できる仕組みを構築すればよい。
同人誌のような物理的な冊子に(QRコードなどで)情報を付与することは難しいとしても、デジタル作品であれば、そして、それがネットワーク上で流通しているならば、その仕組みを構築することは可能ではないでしょうか。
今までは、出版社が様々な権利処理をしていて、その権利処理に係る手間やコストを価格に上乗せして、書籍を出版していました。
パロディ作品を創作する人たちは、恐らくそのような権利処理をする術を知らず、自由に同人誌を創っていますが、もし元の著作物がデジタル作品であって、著作者や著作権者などの情報が簡単に確認できるのであれば、その情報を踏まえた上で、著作者をリスペクトしつつ二次創作を行うのではないでしょうか。
そして、リスペクトをするのであれば、当然著作者に対して経済的報酬を与えるという意思も働くでしょう。
考えていくと、著作権情報をわかりやすく提供する、という問題が解決されれば、
著作物を生み出す
→二次創作を生み出す
→元の著作者に報酬が与えられる、
という好循環が生み出される可能性が高まります。
著作権情報をわかりやすく提供する方法の一つに、クリエイティブ・コモンズの取り組みがあります。
以前にも取り上げましたが、クリエイティブ・コモンズでは、著作者がわかりやすいマークを使用して「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません」という意思表示をします。基本となる4種類の条件(組み合わせにより6種類になる)のいずれかを提示して、利用者に著作物の利用を促しています。そして、作品がWeb上で公開される際に検索や機械処理がしやすいメタデータのフォーマットを提案しています。
このようなわかりやすいマークやメタデータには今後の発展が見込まれますし、ほかにも色々な方法・手段があると思います。そして、自由利用(著作物の無償提供)の次に必要になるのは、著作物の有償提供のステップです。
どのように著作者に経済的報酬を与えるか、好循環のサイクルをどのように構築するか、を考えていかなければなりません。そのとき問題になってくるのは、著作物の評価、著作物の使用料などです。すなわち、著作権を取り扱うノウハウ、知識が必要になってきます。もちろん、二次創作を行う者は、そのノウハウや知識のプロではありません。
著作権を取り扱う際のコンシェルジュ、それが二次創作を行う者に求められています。そのコンシェルジュはAIでもよいのかもしれません。
デジタル社会、ネットワーク社会において、権利処理の仕組みをどのように構築するか、様々な可能性を探っていきましょう。