前回、高度化し複雑化するIT社会・ネットワーク社会における、情報とその権利の問題について述べました。
そもそも、IT社会・ネットワーク社会における情報とはどのようなものでしょうか。例えば、ネット上には様々なサイトやサービスがあり、そこには色々な情報があります。恐らく、皆さんは、仕事に関係のあるサイトやサービスを常に目にし、趣味のサイトやサービスをいつも楽しんでいると思います。特に、最新の情報は、ネットの方が、図書や雑誌などの出版物よりも早く入手できます。
研究者であれば論文を学会のサイトから入手し、技術者であれば特許文献を特許情報サイトから入手しています。
研究者は、オリジナルな論文を書くために、専門分野の過去から現在に至るまでの論文に必ず目を通します。膨大な数の論文を読んだ上で自説のオリジナリティーを高めていきます。そして、技術者も、新技術を世に出すに当たって、特定技術分野の膨大な数の特許文献に目を通します。そうすることによって、真に進歩的な技術が世の中に浸透します。
これらの例からわかることは、情報が次の情報を生み出す土壌になっているということです。価値のある情報を産むためには、早く、多くの情報を得ることが必要になっているのです。
また、音楽愛好家は音楽を配信サイトから入手し、映画好きな方は映画をサブスクなどで視聴し、ゲーマーはゲームアプリを配信サイトから入手するか、ストリーミングで楽しんでいます。この場合、どの音楽を入手するかについてリスト上の膨大な数の音楽(の一部)を聴き比べることが可能であり、また、映画を選択するに当たって様々な映画についての内容や評価などをサブスクの画面で比較することができ、ゲームについても他のプレーヤーのゲーム実況を見て事前に把握することができるようになっています。しかも、最新の音楽、映像、ゲームがそこには並んでいます。
これらの例からわかることは、情報を選択するに当たって、常に膨大な数の情報に接しているということです。価値のある情報を得るためには、多くの情報に触れることが必要になっているのです。
情報が情報を生み出すこと、情報選択に当たって多くの情報に触れることが、デジタル化・ネット化によって、過去とは比較にならないくらい重要になってきているのです。しかも、この傾向は今後ますます加速するでしょう。このことは何を意味するのでしょうか。
「情報社会」という語や概念が広く用いられるようになったのは、インターネットが普及する90年代半ば以降であるとされていますが(ウィキペディア「情報化社会」)、それから30年を経た今でも、「何を意味するのか」の問いに、私たちは本当に向き合っていないのではないでしょうか。
情報が情報を生み出すことの意味、情報選択に当たって多くの情報に触れることの意味を、著作権(更には知的財産権)をキーにして、考えていきましょう。