0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

「情報の大航海時代」と著作権(1)

大航海時代と聞いて、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。

1400年代から1600年代にかけて、ポルトガルとスペインなどが競って新航路を開拓し、結果として新大陸の発見や地球一周が達成されました。当初はアジアの香辛料(胡椒など)を求めて新航路を探っていましたが、それが可能になったのは航海技術の高度化などの背景があったからでした。

そして、赤道以南のアフリカ大陸の発見や、南北アメリカ大陸の発見などで、ヨーロッパの国々が競って植民地政策をとるようになり、更なる航海技術の進歩が促され、航行の安定化も進みました。また、その一方で、原住民が追われたり滅亡したりして、古来からある文明や文化が急速に失われていきました。当時は国際法(条約など)もなく、ヨーロッパの国が一方的に新大陸の富を独占していくという有様でした。

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何となく、現在のIT社会・ネットワーク社会に似ていますね。。

今はGAFAのような巨大IT企業がデジタルネットワーク社会の富を(一方的に)独占しています。そして、デジタル化されてネットワーク上を流れる情報の中には怪しい著作物が多々含まれており、例えば、インターネットサイトやSNS上には、著作権者が不明な著作物や、公衆送信権の許諾をとっているか否かが不明な著作物が流れていることもあります。

まさに、海賊たちのやりたい放題であり、そのような環境をプラットフォームとして提供している巨大IT企業も、その取り締まりに積極的であるとは言い難いです(彼らは注意喚起を行うのみであり、そもそも彼らは警察ではないので取り締まる責務はありません)。

デジタル情報の権利(誰がどのようなデジタル情報に何の権利を持っているのか)がハッキリとしていない、可視化されていない、違反した場合の罰則とその運用が曖昧であることが様々な不秩序の原因となっています。

国際間の著作権についての混乱や損害も、今は著作権法が各国で異なっていて、しかも著作権法の内容がIT社会・ネットワーク社会に本質的に対応していないことに起因します。それ故に、様々な混乱が発生したり、抜け道による損害が生じるのです。

 

私は、この状態が未来永劫続くとは思いません。むしろ今が異常な状態、過渡的な状態であって、やがて時間をかけて適切な状態に収れんしていくと考えています。

例えば、中長期的には、万国共通の「デジタル著作権法」を定めて、デジタルネットワーク上で流通する著作物についての取り扱い(創作者には適切な報酬、利用者には妥当な課金)を定めるような方策を考えていく必要があるかもしれません。

また、プラットホームを巨大IT企業に独占させたり、デジタルコンテンツ流通をサブスク運営企業に独占させることも、長い目で見ると、著作物の創作者にとって必ずしも良い環境であるとは言い難いでしょう。

 

15世紀から17世紀までの大航海時代は世界史を一変させました。

今は、インターネット世界やメタバース空間などによって、思想や感情を表現する場が拡張し、その外縁は更なる広がりを見せています。そして、「情報の大航海時代」は、著作物の創作や流通の環境を一変させるでしょう。現に、音楽、映像、ゲームの創作と流通の環境は激変しています。

 

しかし、現実の状況は、創作者や利用者にとって望ましいと言えるでしょうか。今は個人ミュージシャンが自作の曲をYouTubeでライブ演奏していますが、聴者がそのミュージシャンに報酬を直接与えるシステムではありません(YouTubeが介在しています)。2020年にゲームアプリ「Fortnite」を配信するEpic Games社がApp Storeを運営するApple社を訴えた理由は、Apple社への巨額の手数料支払いを問題視したからでした。ゲームなどの著作物の利用者が、著作物の創作者(ゲーム会社など)に直接報酬を与える、またはそれに近いかたちを構築していくことが理想です。

 

現在の「情報の大航海時代」の進展によって、そのような理想も実現する可能性があると私は考えています。

今後ますます高度化し複雑化するIT社会・ネットワーク社会における、情報とその権利の問題。中でも、最も重要な一つである著作権の取り扱いの問題。著作物を創作する創作者の地位の向上の問題、、などなどいろいろな問題があります。当然、一つの国で解決できる問題ではありません。何らかの新しい視座も必要になります。

 

次回から様々な可能性を探り、新しい視座・視点を見つけていきましょう。

そして、著作権や、それを含む知的財産権を更に深掘りしていきましょう。

 

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