0から始める著作権

  このブログでは著作権について解説していきます。

「情報の大航海時代」と著作権(5)

前回は、二次創作を生み出す時に元の著作者に報酬を与えると興るであろう好循環のサイクルと、そのための著作権情報の提供、著作物の評価、著作物の使用料の重要性について話をしました。今回は、著作権情報や著作物の評価について、具体的な例を挙げながら詳しく見ていきましょう。

 

著作権情報とは、何についてどんな著作権を誰が持っているかの情報であり、パロディ作品のような二次創作品の場合は、元になっている著作権情報が曖昧であることは前回までに述べました。また、楽曲のアレンジも二次創作品であり、アレンジ曲には元になっている曲の著作権情報や、アレンジをする許諾を得ているかの情報が付いていない場合が多々あるので、様々な誤解や争いをもたらす元凶になっています。

 

そもそも、元になっている曲の著作権情報はどのように調べればよいのでしょうか。実は、楽曲の著作権情報は簡単に調べることができます。音楽著作権を管理している団体であるJASRACが「J-WID」という楽曲データベースを提供しています。

このデータベースによって、ある特定の楽曲の演奏権や複製権などを誰が持っているかの情報を調べることができます。例えば、進撃の巨人のオープニングテーマである「紅蓮の弓矢」を作品タイトルに入力して進めていくと、作詞・作曲が「REVO」で、出版者が「ポニーキャニオン音楽出版」と表示されます。すなわち、楽曲を創った著作者が「REVO」で、楽曲のプロモーションなどをするために著作権を譲り受けた音楽出版者(著作権者)が「ポニーキャニオン音楽出版」であることがわかります。その「ポニーキャニオン音楽出版」が、著作権の管理をJASRACに任せているのです(JASRACが一定期間著作権を預かって著作権使用料の徴収を代行している)。

 

ここで気を付けなければいけない点は、JASRACは、楽曲をアレンジする権利(二次的著作物を創作する権利)については管理をしていないので、ある楽曲について他人がアレンジをしたいときに、著作権者に直接交渉をしてアレンジを認めてもらう必要がある、ということです。また、著作者には、楽曲を勝手に変えてはいけない同一性保持権があるので、著作者にも直接交渉をしてアレンジを認めてもらう必要もあります。このような交渉は結構大変であり、個人アーティストの場合はなかなかできるものではありません。その交渉のプロの方にお任せしたいところですが、ビジネスに直結しない限り、資金的にも無理があります。ですので、著作権を取り扱う際のコンシェルジュのような存在、サービスがこれからのデジタル社会、ネットワーク社会においては必要になってくるのです。

 

次に、著作物の評価についても考えてみましょう。音楽の話題が出たので、音楽の著作物の使用料について見てみましょう。

JASRACは、管理している楽曲の著作権の「使用料計算シミュレーション」をWebで提供しています。それによれば、「紅蓮の弓矢」(5分11秒)を100枚のCDに非営利目的で録音(非商用複製)する場合の使用料は891円でした。また、営利目的(商用複製)で定価を明示しないで100枚のCDに録音する場合の使用料は、2倍の1782円でした。高いか安いかは別として、音楽の著作権の使用料が簡単に知ることができるサービスは、とても参考になります。

 

ここで気になるのは、使用料の計算式において、楽曲の評価が反映されていないことです。高評価を得ている楽曲と低評価の楽曲が、同じ使用料になります。計算式は「8.1 円 × 50/100 × 製造数 × 管理楽曲数 + 消費税相当額」であり、楽曲のランキングは盛り込まれていないのです。本来は著作物の評価が適正にリアルタイムになされて、その評価に基づいて著作物の使用料が株相場のように変動されるて然るべきです。今後のデジタル化やネットワーク化によって、そのような仕組みを作ることはそれ程難しいことではなくなるでしょう。今後の課題と言えます。

 

上記の「使用料計算シミュレーション」は便利なサービスですが、これは音楽の著作物の場合であって、しかも対象はJASRACが管理している楽曲のみです。音楽以外の他の著作物や、JASRACが管理していない楽曲は対象外です。しかも、これまで述べてきたネット小説の二次創作や、同人誌のパロディ作品のような二次的著作物を創作するときは、元の著作者から許可を得たり、対価を支払うことが必要になりますが、その許可を得る方法や対価の相場などは広く知られていません。つまり、一般の人にとってはブラックボックスとなっており、ブラックボックスであるが故に個人の方は自ら許可を得ようとはしない、許可を得ていないから何となく後ろめたい、という悪循環に陥ってしまっているのです。

 

今後、デジタル化やネットワーク化が益々加速していく状況において、そして、個人による創作活動の量と質がSNSやその他の手段を通じて更に向上していく環境下において、このようなブラックボックスを残しておくことは害であるほかありません。

したがって、上で述べたような二次的著作物の創作に当たっては、創作者である個人自らが著作権に関する知識を身に付けて、然るべき環境改善の声を上げていく、という姿勢が今後は必ず必要になってくるのです。

次回もこの問題について考えていきましょう。

 

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「情報の大航海時代」と著作権(4)

前回は、二次創作の元の著作者に何らの経済的報酬を与えてよいのでは、という話をしました。果たして、元の著作者の情報はどのように知ることができるのでしょうか。

食品の世界では、トレーサビリティが普及しつつあり、食品の生産者、生産日、生産方法などの生産に関する情報や、輸送経路などの流通に関する情報を、QRコードなどにより購入者が確認できようになっています。

 

パロディ作品のような二次創作品についても、そのような情報、すなわち、元になっている著作物は何か、その著作者は誰か、その著作者が著作権を持っているのか、持っていないならば現在の著作権者は誰か、という情報が簡単に確認できる仕組みを構築すればよい。

同人誌のような物理的な冊子に(QRコードなどで)情報を付与することは難しいとしても、デジタル作品であれば、そして、それがネットワーク上で流通しているならば、その仕組みを構築することは可能ではないでしょうか。

 

今までは、出版社が様々な権利処理をしていて、その権利処理に係る手間やコストを価格に上乗せして、書籍を出版していました。

パロディ作品を創作する人たちは、恐らくそのような権利処理をする術を知らず、自由に同人誌を創っていますが、もし元の著作物がデジタル作品であって、著作者や著作権者などの情報が簡単に確認できるのであれば、その情報を踏まえた上で、著作者をリスペクトしつつ二次創作を行うのではないでしょうか。

そして、リスペクトをするのであれば、当然著作者に対して経済的報酬を与えるという意思も働くでしょう。

 

考えていくと、著作権情報をわかりやすく提供する、という問題が解決されれば、

 著作物を生み出す

 →二次創作を生み出す

  →元の著作者に報酬が与えられる、

という好循環が生み出される可能性が高まります。

 

 

著作権情報をわかりやすく提供する方法の一つに、クリエイティブ・コモンズの取り組みがあります。

以前にも取り上げましたが、クリエイティブ・コモンズでは、著作者がわかりやすいマークを使用して「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません」という意思表示をします。基本となる4種類の条件(組み合わせにより6種類になる)のいずれかを提示して、利用者に著作物の利用を促しています。そして、作品がWeb上で公開される際に検索や機械処理がしやすいメタデータのフォーマットを提案しています。

 

このようなわかりやすいマークやメタデータには今後の発展が見込まれますし、ほかにも色々な方法・手段があると思います。そして、自由利用(著作物の無償提供)の次に必要になるのは、著作物の有償提供のステップです。

どのように著作者に経済的報酬を与えるか、好循環のサイクルをどのように構築するか、を考えていかなければなりません。そのとき問題になってくるのは、著作物の評価、著作物の使用料などです。すなわち、著作権を取り扱うノウハウ、知識が必要になってきます。もちろん、二次創作を行う者は、そのノウハウや知識のプロではありません。

 

著作権を取り扱う際のコンシェルジュ、それが二次創作を行う者に求められています。そのコンシェルジュはAIでもよいのかもしれません。

デジタル社会、ネットワーク社会において、権利処理の仕組みをどのように構築するか、様々な可能性を探っていきましょう。

 

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「情報の大航海時代」と著作権(3)

前回は、情報が情報を生み出すことについて述べました。今回は、その具体的な事例を見ていきましょう。

 

皆さんは、ネット小説という言葉を耳にしたことがあると思います。オンライン小説とも呼ばれます。インターネット上で小説を発表して、有名になって、その小説が書籍として出版されるに至った、という話もあります。

実は、このネット小説の世界では、二次創作が多く行われています。二次創作というのは、元の小説の設定や登場人物を利用しつつ独自の視点で創り変えることであり、小説にとどまらず、元の小説を漫画化したり、アニメ化・映画化することもあります。

このような二次創作は、著作権法の世界では「二次的著作物」と言います。

 

覚えていますか、「二次的著作物」。小説を書いた作家(著作者)は、その小説を脚色したり、映画化したりする権利を持っていましたね。この権利が「二次的著作物を創作する権利」でした。

そうすると、ある小説を元にして二次創作をする場合、元の小説の作家からこの権利の許諾を得なければいけないのですが、実際には、その許諾を得ていないことが多いと言われています。あるいは、許諾を受けていてもそのことがハッキリ書かれていないのでわかりにくくなっている、ということもあります。

 

似たようなことが、コミックマーケット(コミケ)での同人誌販売においても見られます。コミケの同人誌には、漫画やアニメのパロディ作品が多く掲載されています。このパロディ作品も二次的著作物ですので、漫画やアニメの著作者から許諾を得てパロディ作品を創作する必要があるのですが、実際に許諾を得ているかどうか、不明であることが多いです。ほとんど許諾を得ていないという実態もささやかれています。

 

本来であれば、許諾なしのパロディ作品の創作は許されるものではありません。でも、元の漫画やアニメの著作者は、それを見て見ぬふりをしている、あるいは半分認めている場合が多いようです。何故でしょうか。それは、元の漫画やアニメの宣伝になるからであり、フアン層の拡大に繋がり、もしかしたら濃いフアンが応援や親しみを込めてそのパロディ作品を創ってくれているのかもしれないという理解が働いているからです。

ですので、悪質なパロディ作品、元の漫画やアニメを貶めるようなパロディ作品でない限り、元の漫画やアニメの著作者はパロディ作品を黙認しているのです。

 

 

しかし、このような実態は健全であると言えるでしょうか。パロディ作品を創ったら、少額でもよいので元の漫画やアニメの著作者に見返りがあってもよいのではないでしょうか。元の漫画やアニメの著作者に何らかの経済的報酬を与えてもよいのではないでしょうか。パロディ作品を創った人も、元の漫画やアニメの著作者をリスペクトしているので、多少なりともそれを望んでいるのではないでしょうか。

でも一方で、そんなことをしたら、自由にパロディ作品を創ることができなくなり、開放的なコミケが成り立たなくなるとの考えもあります。この点難しいところです。コミケの活気を削ぐことはしたくない・・・

 

大事なことは、元の漫画やアニメの著作者、パロディ作品の作者、同人誌の購入者の3者がwin-winの関係になること。元の漫画やアニメの著作者も笑顔でコミケに参加できること、ではないでしょうか。現時点では元の漫画やアニメの著作者がお忍びでコミケに参加することがあるかもしれませんが、本来は堂々とコミケに参加して、パロディ作品を講評する、という機会もあってよい。そうするためには、やはりパロディ作品から何らかの経済的報酬を得てもよいのではないか。

同様に、ある小説を元にして二次創作をしたら、元の小説の作家に何らかの経済的報酬を与えてもよいのではないか。

 

次回は、その可能性について探っていきましょう。

 

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「情報の大航海時代」と著作権(2)

前回、高度化し複雑化するIT社会・ネットワーク社会における、情報とその権利の問題について述べました。

そもそも、IT社会・ネットワーク社会における情報とはどのようなものでしょうか。例えば、ネット上には様々なサイトやサービスがあり、そこには色々な情報があります。恐らく、皆さんは、仕事に関係のあるサイトやサービスを常に目にし、趣味のサイトやサービスをいつも楽しんでいると思います。特に、最新の情報は、ネットの方が、図書や雑誌などの出版物よりも早く入手できます。

 

研究者であれば論文を学会のサイトから入手し、技術者であれば特許文献を特許情報サイトから入手しています。

研究者は、オリジナルな論文を書くために、専門分野の過去から現在に至るまでの論文に必ず目を通します。膨大な数の論文を読んだ上で自説のオリジナリティーを高めていきます。そして、技術者も、新技術を世に出すに当たって、特定技術分野の膨大な数の特許文献に目を通します。そうすることによって、真に進歩的な技術が世の中に浸透します。

これらの例からわかることは、情報が次の情報を生み出す土壌になっているということです。価値のある情報を産むためには、早く、多くの情報を得ることが必要になっているのです。

 

また、音楽愛好家は音楽を配信サイトから入手し、映画好きな方は映画をサブスクなどで視聴し、ゲーマーはゲームアプリを配信サイトから入手するか、ストリーミングで楽しんでいます。この場合、どの音楽を入手するかについてリスト上の膨大な数の音楽(の一部)を聴き比べることが可能であり、また、映画を選択するに当たって様々な映画についての内容や評価などをサブスクの画面で比較することができ、ゲームについても他のプレーヤーのゲーム実況を見て事前に把握することができるようになっています。しかも、最新の音楽、映像、ゲームがそこには並んでいます。

これらの例からわかることは、情報を選択するに当たって、常に膨大な数の情報に接しているということです。価値のある情報を得るためには、多くの情報に触れることが必要になっているのです。

 

 

情報が情報を生み出すこと、情報選択に当たって多くの情報に触れることが、デジタル化・ネット化によって、過去とは比較にならないくらい重要になってきているのです。しかも、この傾向は今後ますます加速するでしょう。このことは何を意味するのでしょうか。

 

「情報社会」という語や概念が広く用いられるようになったのは、インターネットが普及する90年代半ば以降であるとされていますが(ウィキペディア「情報化社会」)、それから30年を経た今でも、「何を意味するのか」の問いに、私たちは本当に向き合っていないのではないでしょうか。

 

情報が情報を生み出すことの意味、情報選択に当たって多くの情報に触れることの意味を、著作権(更には知的財産権)をキーにして、考えていきましょう。

 

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「情報の大航海時代」と著作権(1)

大航海時代と聞いて、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。

1400年代から1600年代にかけて、ポルトガルとスペインなどが競って新航路を開拓し、結果として新大陸の発見や地球一周が達成されました。当初はアジアの香辛料(胡椒など)を求めて新航路を探っていましたが、それが可能になったのは航海技術の高度化などの背景があったからでした。

そして、赤道以南のアフリカ大陸の発見や、南北アメリカ大陸の発見などで、ヨーロッパの国々が競って植民地政策をとるようになり、更なる航海技術の進歩が促され、航行の安定化も進みました。また、その一方で、原住民が追われたり滅亡したりして、古来からある文明や文化が急速に失われていきました。当時は国際法(条約など)もなく、ヨーロッパの国が一方的に新大陸の富を独占していくという有様でした。

・・・

何となく、現在のIT社会・ネットワーク社会に似ていますね。。

今はGAFAのような巨大IT企業がデジタルネットワーク社会の富を(一方的に)独占しています。そして、デジタル化されてネットワーク上を流れる情報の中には怪しい著作物が多々含まれており、例えば、インターネットサイトやSNS上には、著作権者が不明な著作物や、公衆送信権の許諾をとっているか否かが不明な著作物が流れていることもあります。

まさに、海賊たちのやりたい放題であり、そのような環境をプラットフォームとして提供している巨大IT企業も、その取り締まりに積極的であるとは言い難いです(彼らは注意喚起を行うのみであり、そもそも彼らは警察ではないので取り締まる責務はありません)。

デジタル情報の権利(誰がどのようなデジタル情報に何の権利を持っているのか)がハッキリとしていない、可視化されていない、違反した場合の罰則とその運用が曖昧であることが様々な不秩序の原因となっています。

国際間の著作権についての混乱や損害も、今は著作権法が各国で異なっていて、しかも著作権法の内容がIT社会・ネットワーク社会に本質的に対応していないことに起因します。それ故に、様々な混乱が発生したり、抜け道による損害が生じるのです。

 

私は、この状態が未来永劫続くとは思いません。むしろ今が異常な状態、過渡的な状態であって、やがて時間をかけて適切な状態に収れんしていくと考えています。

例えば、中長期的には、万国共通の「デジタル著作権法」を定めて、デジタルネットワーク上で流通する著作物についての取り扱い(創作者には適切な報酬、利用者には妥当な課金)を定めるような方策を考えていく必要があるかもしれません。

また、プラットホームを巨大IT企業に独占させたり、デジタルコンテンツ流通をサブスク運営企業に独占させることも、長い目で見ると、著作物の創作者にとって必ずしも良い環境であるとは言い難いでしょう。

 

15世紀から17世紀までの大航海時代は世界史を一変させました。

今は、インターネット世界やメタバース空間などによって、思想や感情を表現する場が拡張し、その外縁は更なる広がりを見せています。そして、「情報の大航海時代」は、著作物の創作や流通の環境を一変させるでしょう。現に、音楽、映像、ゲームの創作と流通の環境は激変しています。

 

しかし、現実の状況は、創作者や利用者にとって望ましいと言えるでしょうか。今は個人ミュージシャンが自作の曲をYouTubeでライブ演奏していますが、聴者がそのミュージシャンに報酬を直接与えるシステムではありません(YouTubeが介在しています)。2020年にゲームアプリ「Fortnite」を配信するEpic Games社がApp Storeを運営するApple社を訴えた理由は、Apple社への巨額の手数料支払いを問題視したからでした。ゲームなどの著作物の利用者が、著作物の創作者(ゲーム会社など)に直接報酬を与える、またはそれに近いかたちを構築していくことが理想です。

 

現在の「情報の大航海時代」の進展によって、そのような理想も実現する可能性があると私は考えています。

今後ますます高度化し複雑化するIT社会・ネットワーク社会における、情報とその権利の問題。中でも、最も重要な一つである著作権の取り扱いの問題。著作物を創作する創作者の地位の向上の問題、、などなどいろいろな問題があります。当然、一つの国で解決できる問題ではありません。何らかの新しい視座も必要になります。

 

次回から様々な可能性を探り、新しい視座・視点を見つけていきましょう。

そして、著作権や、それを含む知的財産権を更に深掘りしていきましょう。

 

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著作者を取り巻く権利について(6)

前回まで、著作者を取り巻く権利である著作隣接権について見てきました。いろいろな種類があったので、ここでまとめてみましょう。

 

著作隣接権は、著作物を皆に伝える役割を持っている、

①実演家、

②レコード製作者、

③放送事業者、

④有線放送事業者

に認められている権利であり、以下の権利が含まれていました。

○実演家の著作隣接権

 ~録音権・録画権、

  放送権・有線放送権、

  送信可能化権など

○レコード製作者の著作隣接権

 ~複製権、

  送信可能化権など

○放送事業者の著作隣接権

 ~複製権、

  送信可能化権など

○有線放送事業者の著作隣接権

 ~複製権、

  送信可能化権など

これらの権利は、他人に譲渡することができる権利でしたね。

 

そして、実演家には、特別に「実演家人格権」という権利もあり、これは他人に譲渡することができない権利でした。

○ 実演家人格権

 ~同一性保持権など

この実演家人格権も、著作隣接権に含まれています(著作権法)。

以上が、著作隣接権のまとめになります。

 

さあ、皆さんは著作隣接権もターゲットに入れました。これまで見てきた著作者人格権、著作権、出版権と合わせると、著作権法が定める権利を網羅したことになります。

例えば、著作権法の112条では、以下のように書かれています。

「著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」

 

著作者   -著作者人格権

著作権者  -著作権

出版権者  -出版権

実演家   -実演家人格権

著作隣接権者-著作隣接権

という図式です。

<権利主体>-<権利内容>の関係ですね。

これで、著作権法が定める権利の全貌を見ることができました。ここまで読んでくれた皆さんは、著作権の権利内容の全体像を把握できることとなったのです。

次回からは、この全体像を踏まえた上で、著作権の活用、更には知的財産権、権利主義社会などについて考えていきましょう!

 

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著作者を取り巻く権利について(5)

前回は、レコード製作者の著作隣接権を紹介しました。

レコード製作者にも、実演家の方々と同様に著作隣接権が与えられていましたね。レコード製作者も、音楽の著作物を皆に伝えてくれる存在であり、著作物を皆に伝える著作隣接権がレコード製作者に認められている、という話でした。

 

さて、皆さんは音楽を聴くのは、自分で購入したCDなどをプレーヤーに入れて聴く場合だけでしょうか。

ラジオやテレビの放送や、有線方法を通じて音楽を聴く機会も多いですよね。そして、演劇もテレビで放送される場合があります。

そうすると、放送事業者や有線放送事業者も、著作物を皆に伝える役目を持っているということができます。

著作権法は、実演家の方々やレコード製作者と同様に、著作物を皆に伝える著作隣接権を、放送事業者や有線放送事業者にも定めています。

 

放送事業者や有線放送事業者の著作隣接権の概要は、以下のとおりです。

○ 放送事業者や有線放送事業者の著作隣接権

 ・複製権

  ~放送や有線放送を、録音したり、録画したりする権利

 ・送信可能化権

  ~放送や有線放送を受信して、インターネット上で送信可能化する権利

 ・再放送権

  ~放送や有線放送を、再放送する権利

 ・放送の伝達権

  ~放送や有線放送を、超大型テレビなどで公に伝達する権利

 

なお、実演家の方々に認められている実演家人格権(実演家に固有の権利)は、放送事業者や有線放送事業者には認められていません。レコード製作者にもそのような人格権は認められていませんでしたね。

 

これまで、実演家の著作隣接権、レコード製作者の著作隣接権、放送事業者や有線放送事業者の著作隣接権を見てきました。

これらの権利の存続期間は以下のとおりです。

 

○実演家の著作隣接権の存続期間

 実演した時から70年間

○レコード製作者の著作隣接権の存続期間

 CDなどの販売から70年間

○放送事業者や有線放送事業者の著作隣接権の存続期間

 放送、有線放送した時から50年間

 

実演家の方々、レコード製作者、放送事業者・有線放送事業者のお陰で、音楽の著作物などが我々に届きます。

著作隣接権は、これらの方々の実演や事業を支える重要な権利ですので、よく理解しておきたいです。

 

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